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名曲「愛は時を越えて」の合唱版【大橋 純子さんを悼んで】

2023年の終わりには、谷村 新司さん、もんた よしのりさん、大橋 純子さんと実力派歌手の訃報が相次ぎました。

その前にも、高橋 幸宏さん、坂本 龍一さんなどが亡くなられ、2023年は音楽家の死がとりわけ多かったように思います。

大橋 純子さんの訃報には、驚きとともにさびしさを痛切に感じました。コロナ禍の数年間、彼女の歌に親子ともども支えられてきたからです。

合唱版「愛は時を越えて」 コロナ禍の合唱活動を支えてくれた名曲

1992年という時代【バブル崩壊前夜】

大橋 純子さんといえば「シルエット・ロマンス」。1981年リリースの名曲です。圧倒的な歌唱力と大人の雰囲気で人気を博しました。でも、彼女の残した名曲はこれだけではありません。

1992年リリース「愛は時を越えて」も、シルエット・ロマンスに負けない名曲・名唱です。
自然な流れのメロディー、大橋さんの大きく包み込むような歌唱力、とにかく素晴らしい。ご存じない方は、ぜひ公式サイトから彼女の歌を聴いてみてください。

音楽の力ってすごいですね。歌を聴くだけで、昭和生まれの方なら当時の空気感を思い出せるはず。

時代は昭和から平成へ、浮かれていたバブル景気が失速の兆しをみせ、いろいろな不安感が社会にひろがっていったあの頃、ピュアな恋愛感情を率直に歌い上げた彼女の歌は新鮮で、幸せって何なのか問いかけてくるような気がしました。

令和の若者も歌っている! 合唱版「愛は時を越えて」

この名曲「愛は時を越えて」(我が息子いわく、通称:あいとき)を令和の若者たちが大事に歌い継いでいることをご存じでしょうか?合唱用にアレンジされ、多くの学校で大切なレパートリーとなっています。

息子が高校時代所属していた合唱部では、「あいとき」を必ずアンコールで歌うことが伝統となっており、今もなお引き継がれています。

コロナ禍の高校生活

「高校で合唱をやりたい!」その一心で乗り越えた高校受験でした。しかし、コロナ禍による緊急事態宣言がだされ、入学式に出席して次の日から休校という事態に。強豪校への入部、希望にもえていた息子にとって落胆と不安は激しいものでした。

全国の子どもたちが、同じような状況におかれたことでしょう。私自身も、学校が休校なのにピアノ教室は開講するということは出来ず、しばらく休業することに。この先音楽活動はどうなるの?という恐怖を感じながら。

オンライン授業、分散登校と段階を経て少しづつ高校生活は始まりましたが、マスクをしての部活動。今でも、マスク姿で歌っている子どもたちの写真を見ると涙がでてきます。歌を歌いたいのにマスク、歌を教えたいのにマスク、子どもたちも先生方も、どれだけ気持ちを抑えていたことか。

2020年は、多くの高校で文化祭が中止になる中、息子の高校ではオンライン配信での文化祭を決行、合唱部の新一年生も初ステージを踏めることになりました。休校明けからわずかな時間での準備、そして先輩からの突然の通達が。

「【愛は時を越えて】の伴奏者を一年生に引き継ぐ。希望者はオーディションをするから、申し出ること」

もちろん、やるしかない!!

「愛は時を越えて」に支えられて

さあ大変!数日ピアノを練習したら、すぐオーデションでした。
無事合格し、「あいとき」の伴奏は息子が3年間引き継ぐことに。憧れだった合唱部で得た、最初の大仕事です。

文化祭本番はオンラインで舞台を見届けました。三年生はこれで引退。部長さんが「(休校で)部活動ができず、やっと始まったらすぐ引退という現実に納得ができません」と涙を流していました。


それでも、先輩たちは一年生に伝えるように素晴らしい演奏。最後には一年生も加わり「愛は時を越えて」を熱唱、息子も初めての大役を終えました。

それから3年間、部活三昧の日々でした。4歳から私がピアノを教えてきましたが、本人が合唱や指揮に本格的に取り組みだしたので、「もう親の出る幕ではないな」と、以後音楽面での口出しはいっさいしないように。

顧問の先生や、先輩・友人からいろいろな刺激を受け、息子は音楽的にも精神的にも成長していきました。感染者増加で部活動・大会にストップがかかることもありましたが、その都度心を切り替え、工夫して乗り切った彼らは、本当に立派だったと思います。

私も影響されて、動画編集を勉強したり、オンラインレッスンを始めてみたり。子どもたちの頑張りを見ていたから、自分もやらなければと思えたのです。

ひとつひとつコンサートを積み重ね、みんなでやり遂げた喜びを確認しあうように、アンコールで「あいとき」を歌う。そんな彼らの姿に感動して、保護者の間では「(メインプログラムと)あいとき用に、ハンカチが2枚いる」と言われていました。

2021年の文化祭もオンライン配信で、あいかわらずマスク着用のまま。3年生になり、いよいよ最後の文化祭で、指揮者と伴奏者だけはマスクをはずしてよいことになりました。そして、やっと保護者、一般の方も文化祭に入場できたのです!嬉しかったです!

3年間、コロナ禍での練習でしたが、その進歩はすさまじかった。一年生の時とは比べ物にならない熟した演奏を彼らは聴かせてくれました。メインプログラムのラストは息子の伴奏でした。難しい曲でしたが、余裕をもって弾いているように見えた。良かった、もう後は「あいとき」だけ…おつかれさま!と思ったら…

なんと息子が、泣いてる!?気が強くて、めったに人前で泣くことなんかなかった子ですが、指揮の先生を見つめて、顔をゆがめて泣いてるではありませんか!ピアニストだから、涙をぬぐうわけにもいかず。気が付けば私も泣いており、周辺でもすすり泣きが聞こえました。歌っている同級生も後輩も。

一瞬にして、この子たちがどれだけ素晴らしい時間を過ごしてきたのか、歌を通して理解できました。密を避けろと言われながらも、密に心をつないできたんですね。

あなたとめぐりあえた喜びが
私をはげますのよ
時を越えていつも心は
あなたと生きていく

「愛は時を越えて」より引用 作詞:芹沢 類 作曲:織田 哲郎

男女の愛を歌っているのですが、歌詞に普遍性があるので、子どもたちはきっと、部員どうしの絆や先生への感謝を胸に刻んで歌っているのです。私も、出会いのすばらしさと、こんな歌が聴けたことに感謝の気持ちでいっぱいになりました。

「あいとき」で始まり、「あいとき」で終わった そして新たな出発

その後部活を引退し、本格的に大学受験モードに。息子は音大進学を決意しました。受験・合格発表・卒業式とあわただしく時は過ぎ、3月末には、最後の「合唱部定期演奏会」がありました。

高校生としての最後の演奏会。やっと、やっと全員マスクをはずして歌うことができました!皆のいきいきとした顔!指揮の先生も嬉しそう!伴奏もコーラスとの呼吸感が違う。やっぱり、生演奏はこうでなくちゃ、と最初から大興奮でした。「ハンカチ2枚じゃ足りないかも?」と思ったり。

アンコール「愛は時を越えて」は、卒業生が最前列に進み出て歌います。間奏後は、更に一歩、力強く前に踏み出して歌う、これも毎年の伝統。息子の友人の顔をマスクなしで見たのは、これが初めてでした。「卒業おめでとう!みんないい顔してる。力強く、これからも歩いていってね!」

この日は、もう息子は泣いていませんでした。「あいとき」の次の伴奏者も決まり、全部後輩に託して、卒業生はそれぞれの道に向かっていきます。

      あとは任せた!

コロナ禍であっても、子どもたちの「あいとき」を聴くたびに幸せな瞬間を感じることが出来ました。
大橋 純子さんが素晴らしい歌を残してくれたおかげです。彼女以外の歌手が歌っていたら、もしかしたら陳腐に聴こえていたかもしれません。圧倒的な歌唱力と嫌みのない表現力のなせる技ですね。

これからもきっと、全国の学校で「愛は時を越えて」が歌われていくことでしょう。

名曲は時を越えて

大橋 純子さんも、天国で喜んでいるでしょうね。

ご冥福をお祈りいたします。