ショパン《エチュード》―エキエル版で見つけた新しい世界ー
ショパンほどピアニスト(プロ・アマチュア問わず)に愛されているクラシックの作曲家はいないのではないでしょうか?

私にとってショパンは「いつまでも忘れられない初恋の人」のような位置づけです💘
ショパンのエチュードを始めて練習することになったときは本当に嬉しかった!
これまでに、ペータース版、春秋社版、パデレフスキ版、コルトー版 を使って練習し、それぞれが大切な学びの相棒でした。
最近、エキエル版(National Edition) を手にしてから、ショパンへの思いが再燃!💘
練習の時間が、「探求する」ひとときへと変わり始めたのです。
「ショパンが本当に求めていた表現って、どんなものだろう?」
「ショパンをもっと知りたい!」
そんな問いかけが、日々の練習に深みを与えてくれます。
このブログでは、エキエル版ショパン《エチュード》の魅力を解説します!
はじめてショパンのエチュードを練習する方、これまでに他の版で練習してきた方にも、楽譜選びの参考にしていただければ幸いです。
エキエル版ショパン《エチュード》とは?
ナショナル・エディション ― 国家事業の原典版編纂
エキエル版は、ショパン研究の集大成とも言えるナショナル・エディション。
ヤン・エキエル教授が、ポーランドの国家事業として、生涯をかけて編纂した楽譜集です。
ショパン国際コンクールの推奨楽譜にもなっています。
近年、日本語版が全音楽譜出版社から刊行され、エキエル教授の最新の研究成果を日本語で読めるようになりました。
複数の自筆譜、初版、弟子が所有していたレッスンでの書き込みなどを徹底的に比較し、作曲者が本当に残したかった姿を私たちに教えてくれます。
他の版とどう違うのか?
エキエル版は、細かい装飾音、スラーやアクセントの配置、そして和声そのものすら他の版と異なることが少なくありません。
慣れ親しんだ音と違うことが書かれているので、最初は戸惑うことも。
しかし「なぜそうなのか」「どの資料を拠りどころにしているか」がエキエル版ではきちんと説明されています。
他の可能性がある場合はきちんとヴァリアントを示し、そのうえで「自分はどう演奏するべきか」と考えるのは、とても楽しいです。
他の版がどの資料にもとづいて編纂されたかについても考察がなされている点に、国家事業としてのプライドを強く感じますね。
エキエル版が学習者におすすめの理由
エキエル版で深まる探求の楽しみ
エキエル版を使うメリットは
- 他の版と比較しながら、自分だけの解釈を育てられる
- 練習が「テクニックの訓練」から「音楽の研究」へと広がる
学び直しピアノに役立つ
ピアノを再開した大人の方にとって、エキエル版は「新しい学び直しの楽しさ」を与えてくれる楽譜です。
「昔弾いた曲をもう一度、新しい目で眺めてみたい」――そんな気持ちにぴったり寄り添ってくれます。
私もエキエル版で学び直しています!👇
パデレフスキ版・コルトー版の特徴
しかし、他の版にもそれぞれの良さがあります。私はショパンのエチュードを6冊もっていますが、パデレフスキ版、コルトー版は練習や指導の場面でとても役立ってきました。
パデレフスキ版:ポーランドのピアニストによる編纂
パデレフスキは、言わずと知れた、20世紀前半を代表するピアニストのひとりです。
熱烈な愛国者で、のちにポーランドの首相を務めたことでもよく知られています。
長年定番として使われ、私たちが耳なじんでいる音です。
日本語版も出ているので詳しい解説を読むこともでき、はじめてエチュードを練習する方でも、安心して使えます。
息子が中学生のときにプレゼントしたのがこちら👇
コルトー版:フランスのピアニストによる編纂
ショパンの第二の故郷ともいえる、フランス。
アルフレッド・コルトーもまた、20世紀前半の歴史的ピアニストであり、パリで音楽教育に力を注いだ人物です。
よって、演奏法について、テクニックの錬磨についての考察がびっしりと書かれており、他の版にはない魅力があります。私もずいぶん、この版からは日頃の練習法について学びました。
惜しむらくは、コルトー版は作品10と作品25が分冊なこと。また「3つの新練習曲集」は入っていません。
ショパンのエチュードには、「作品10」「作品25」「3つの新練習曲集」の3つがありますが、エキエル版・パデレフスキ版・ペータース版・春秋社版は1冊にすべて入っています。
学習者にとって最適な版は?
「版による違い」を知っておくのは大切です。
最初の一冊なら、ナショナル・エディションの「エキエル版」か定番「パデレフスキ版」のどちらかを選んでおくことをおすすめします。
勉強がすすむにつれ、もう一方を加えるとなお良いでしょう。
テクニック改善の必要を強く感じた時、練習法に迷いがあるときには、コルトー版はとても役立ちます。私にとっては、練習用・指導用ともに欠かせない楽譜です。
「別れの曲」(作品10-3)での発見
ショパンのエチュードの中でも特に有名な、作品10-3、通称「別れの曲」。
エキエル版では、これまで弾き慣れていた版と和声が異なり、この曲の世界が変化するのを鮮やかに感じました。一部、ご紹介します。
30小節と31小節、また34小節と35小節の和声に注目してお聴きください。
👇コルトー版など、今まで一般的に知られていた和声
👇エキエル版での解釈


いかがでしたでしょうか?和声が変わることで、曲全体の景色ががらりと変化します。
最初の例では、メロディ部の和声が長→短と変わり、あわせて内声も変化。
私もずっとそれで弾いてきました。
エキエル版では、メロディ部が変わらず、内声のみが変化しています。
この繊細さ、長短が混在したような微妙なサウンドが、ポーランドらしさを感じます。
これを弾いてしまうと、もとのあまりにくっきりとした和声の変化が乱暴なものにも思えてきます。
こうした発見が、エキエル版には随所にあり、練習を「訓練」から「探求」へと変えてくれます。
まとめ|エキエル版でショパンをもっと楽しもう
ショパンの楽譜にはさまざまな版があり、それぞれが学びを助けてくれます。
その中でもエキエル版は、学習者と一緒に探求を楽しむパートナーになってくれるでしょう。
ショパンのエチュードを弾くことは、テクニックの習得を超えて、音楽そのものを探究する喜びにつながります。エキエル版は、その探究の旅をさらに豊かにしてくれる存在。
ショパンの作品を深く味わいたい方は、ぜひ一度手に取ってみてください!
