マイナースケールとは、短調の音階のことです。
▲ このような声を聞くことがよくあります。
マイナースケールには、後述のように3種類のバリエーションがあるため、複雑で難しいと思われがちです。
しかし、実際に曲で使うときには3つのスケールを臨機応変に織り交ぜて使います。3種類をまとめたスケールを練習しておけば、3種類を別々に練習するより実用的!というわけです。
しかも、同じ主音のメジャースケールと比較して練習すれば、おどろくほど簡単にマイナースケールが理解できます。
今回の記事では、マイナースケールのしくみを音程からひもとき、一緒にマイナースケールをつくっていきます。ぜひ、キーボードを触りながらお読みください!
※この記事は、stand fmとの連動企画です。▼こちらのラジオ講座でも音声で記事の内容を解説しています!
※この記事を理解するには、音程について理解が必要になります。
▼ 音程がわからない方は、こちらの記事・Youtubeを先にご覧ください。
>>音程を制す者はコードを制す!
>>Youtube 音程の基本
Cマイナースケール(ハ短調)の配列を音程から考察
前記事でメジャースケール(長音階)について詳しく解説しました。
メジャースケール(長音階)、全音と半音についてよくわからない方は、先にこちらの記事をお読みください。
Cメジャースケールの配列
復習になりますが、Cメジャースケールの配列を全音と半音という音程を使って表すと

▲ 図のように、全音・全音・半音・全音・全音・全音・半音 となります。
メジャースケールの前半、CからGまでに着目すると全音・全音・半音・全音という配列です。
Cマイナースケールの配列
一方、同じ主音のCマイナースケールの配列を全音と半音という音程を使って表すと

▲CからGまでの配列が、Cメジャースケールとはちょっと違いますね。
Eの音が半音下がって、E♭に変わりました。
メジャースケールの3番目の音を半音下げると、同じ主音のマイナースケールを作れるというわけです!
キーボードで弾いて確認してみてください。なお、ラジオ講座第4回では音声付きで解説しています。

半音が入る場所がひとつ変わっただけで、随分イメージが変わりますね!
マイナースケールの主音と各構成音との音程【主音から第5音まで】
今度は、Cマイナースケールの主音と、スケールの各構成音(Gまで)との音程を調べてみます。

- CとCの音程は完全1度
- CとDの音程は長2度
- CとE♭の音程は短3度
- CとFの音程は完全4度
- CとGの音程は完全5度
Cメジャースケールと比較してみましょう。

CからGまでは、CとE♭の音程が短3度になるということ以外は、Cメジャースケールと同じです。
一般化すると、マイナースケールの主音と、音階の3番目の音との音程は短3度ということになります。

メジャースケールでは、主音とⅲの音との音程は長3度。この違いをしっかり押さえておいてください!
3種類のマイナースケール【自然的・和声的・旋律的短音階】について
さて、ここまでで、マイナースケールの3番目の音が重要なことは理解していただけたと思います。
ここからは、さらにマイナースケールを深掘りしていきます。
前述のように、マイナースケールには3種類のバリエーションがあります。
それぞれを
- ナチュラルマイナー(自然的短音階)
- ハーモニックマイナー(和声的短音階)
- メロディックマイナー(旋律的短音階)
と言います。
この3種、スケールの主音から5番目の音までは共通なのですが、6番目、7番目の音に違いがあるんです。
Cマイナースケールで例を挙げてみますね。
1. Cナチュラルマイナー(自然的短音階)

▲ 第6音はA♭、第7音はB♭をとります。
2. Cハーモニックマイナー(和声的短音階)

▲ 第6音はA♭、第7音はBをとります。
ちなみに、A♭とBの音程は長2度よりさらに半音広い音程になります。これを増2度と言います。
長音程がさらに半音広がると、増音程になることを覚えておきましょう!
3. Cメロディックマイナー(旋律的短音階)


▲ このスケールは、上行形と下行形で違う音をとります。
上行形では第6音がA、第7音がBをとり、下行形ではナチュラルマイナーと同じで、第6音はA♭、第7音はB♭をとります。
「複雑で覚えられない!」と思うかもしれませんが、
安心してください
マイナースケールの第5音より上の音は全て使い得る、と考えれば良いのです。
マイナースケールは、第5音までは全・半・全・全と上行し、あとは主音まで半音階になります。

マイナースケールは、全音・半音・全音・全音 ➕ 半音階と理解しておけば良し!
▼ したがって、Cマイナースケールの構成音は、このようになります。

マイナースケールの主音と各構成音との音程【主音から第7音まで】
マイナースケールの構成音がわかったところで、主音と各構成音との音程を全て整理してみましょう。
主音とⅰからⅴまでの各構成音との音程はすでに説明しました。
ここでは、マイナースケールの構成音全てを考察します。
Cマイナースケールを例にあげると


6度、7度の音程は長・短の2種類あります!
12のマイナースケールをつくろう!【音程配列がわかれば簡単】
ここからは、キーボード上で12のマイナースケールをどんどんつくっていきましょう!
主音から各構成音までの音程も必ず確認してください。
同じ主音のメジャースケールとマイナースケールを同主調と言いますが、同主調でのスケール構成音の違いをローマ数字を使って一般化してみます。音度とは、「音階の中で何番目の音か」ということです。
同主調 構成音の比較:長調を基準とする
メジャースケール 音度 ローマ数字 | ⅰ | ⅱ | ⅲ | ⅳ | ⅴ | ⅵ | ⅶ |
マイナースケール 音度 ローマ数字 | ⅰ | ⅱ | ⅲ♭ | ⅳ | ⅴ | ⅵ♭・ ⅵ | ⅶ♭・ⅶ |
5度圏と異名同音(エンハーモニック)
スケールを弾く前に、大切なことを確認しておきます。
これから、スケールの主音を完全4度ずつ上げていって一巡しますが、これを図にすると下のようになります。この図を「五度圏」と言い、これからも使いますので覚えておくと便利です。

別記事「スケールを制す者はコードを制す!」でも、12のメジャースケールを構築するときに主音を完全4度ずつ上げていきました。(上図の時計回り)
マイナースケールでも、同じように進めていきます。ただし、上図の緑表記に注目してください。
これは、異名同音(エンハーモニック)と言い、同じ音に2種類の表記法があるということです。
今回は、下の2つのマイナースケールで緑表記のほうを採用します。
- D♭マイナースケール → C♯マイナースケールとして表記
- G♭マイナースケール → F♯マイナースケールとして表記
緑表記のほうがよく使う調だからです。

A♭マイナースケールとG♯マイナースケールは同頻度で使います。どちらでも弾けるようにしておくと良いでしょう。

さっそく12のマイナースケールを弾いてみよう!
F マイナースケール
Cマイナースケールは先ほど説明しましたので、主音を完全4度上げてFからスタートしましょう!
以後、5度圏時計回りで一巡します。
最初にFメジャースケールを弾き、次に3番目の音(ⅲ)を半音下げてFマイナースケールにしましょう。Cからは半音階にします。
音度 ( )はマイナースケール | ⅰ | ⅱ | ⅲ (ⅲ♭) | ⅳ | ⅴ | ⅵ (ⅵ♭・ⅵ) | ⅶ (ⅶ♭・ⅶ) |
Fメジャースケール | F | G | A | B♭ | C | D | E |
Fマイナースケール | F | G | A♭ | B♭ | C | D♭・D | E♭・E |

主音と各構成音との音程は、上図の通りです。
B♭マイナースケール
次はFの完全4度上、B♭を主音とします。
音度 ( )はマイナースケール | ⅰ | ⅱ | ⅲ (ⅲ♭) | ⅳ | ⅴ | ⅵ (ⅵ♭・ⅵ) | ⅶ (ⅶ♭・ⅶ) |
B♭メジャースケール | B♭ | C | D | E♭ | F | G | A |
B♭マイナースケール | B♭ | C | D♭ | E♭ | F | G♭・G | A♭・A |

主音と各構成音との音程は、上図の通りです。
E♭マイナースケール
次はB♭の完全4度上、E♭を主音とします。
音度 ( )はマイナースケール | ⅰ | ⅱ | ⅲ (ⅲ♭) | ⅳ | ⅴ | ⅵ (ⅵ♭・ⅵ) | ⅶ (ⅶ♭・ⅶ) |
E♭メジャースケール | E♭ | F | G | A♭ | B♭ | C | D |
E♭マイナースケール | E♭ | F | G♭ | A♭ | B♭ | C♭・C | D♭・D |

主音と各構成音との音程は、上図の通りです。
A♭マイナースケール
次はE♭の完全4度上、A♭を主音とします。
音度 ( )はマイナースケール | ⅰ | ⅱ | ⅲ (ⅲ♭) | ⅳ | ⅴ | ⅵ (ⅵ♭・ⅵ) | ⅶ (ⅶ♭・ⅶ) |
A♭メジャースケール | A♭ | B♭ | C | D♭ | E♭ | F | G |
A♭マイナースケール | A♭ | B♭ | C♭ | D♭ | E♭ | F♭・F | G♭・G |

主音と各構成音との音程は、上図の通りです。
なお、この調はG♯マイナースケールとして扱われることも多いので、A♭をG♯と考えて弾く練習もしておくと良いでしょう。
G# マイナースケール | G# | A# | B | C# | D# | E・E# | F#・F## |
C♯ マイナースケール
次はA♭の完全4度上、D♭が主音ですが、ここでは主音をC♯と読み替えて(異名同音)マイナースケールをつくりましょう。
音度 ( )はマイナースケール | ⅰ | ⅱ | ⅲ (ⅲ♭) | ⅳ | ⅴ | ⅵ (ⅵ♭・ⅵ) | ⅶ (ⅶ♭・ⅶ) |
D♭メジャースケール | D♭ | E♭ | F | G♭ | A♭ | B♭ | C |
C# マイナースケール | C# | D# | E | F# | G# | A・A# | B・B# |

主音と各構成音との音程は、上図の通りです。
F♯ マイナースケール
次はC♯の完全4度上、F♯を主音とします。
音度 ( )はマイナースケール | ⅰ | ⅱ | ⅲ (ⅲ♭) | ⅳ | ⅴ | ⅵ (ⅵ♭・ⅵ) | ⅶ (ⅶ♭・ⅶ) |
F#メジャースケール | F# | G# | A# | B | C# | D# | E# |
F# マイナースケール | F# | G# | A | B | C# | D・D# | E・E# |

主音と各構成音との音程は、上図の通りです。
B マイナースケール
次は、F♯の完全4度上のBを主音とします。
音度 ( )はマイナースケール | ⅰ | ⅱ | ⅲ (ⅲ♭) | ⅳ | ⅴ | ⅵ (ⅵ♭・ⅵ) | ⅶ (ⅶ♭・ⅶ) |
B メジャースケール | B | C# | D# | E | F# | G# | A# |
B マイナースケール | B | C# | D | E | F# | G・G# | A・A# |

主音と各構成音との音程は、上図の通りです。
E マイナースケール
次はBの完全4度上、Eを主音とします。
もう少し、頑張りましょう!
音度 ( )はマイナースケール | ⅰ | ⅱ | ⅲ (ⅲ♭) | ⅳ | ⅴ | ⅵ (ⅵ♭・ⅵ) | ⅶ (ⅶ♭・ⅶ) |
E メジャースケール | E | F# | G# | A | B | C# | D# |
E マイナースケール | E | F# | G | A | B | C・C# | D・D# |

主音と各構成音との音程は、上図の通りです。
A マイナースケール
次はEの完全4度上、Aを主音とします。
音度 ( )はマイナースケール | ⅰ | ⅱ | ⅲ (ⅲ♭) | ⅳ | ⅴ | ⅵ (ⅵ♭・ⅵ) | ⅶ (ⅶ♭・ⅶ) |
A メジャースケール | A | B | C# | D | E | F# | G# |
A マイナースケール | A | B | C | D | E | F・F# | G・G# |

主音と各構成音との音程は、上図の通りです。
D マイナースケール
次は、Aの完全4度上、Dを主音とします。
音度 ( )はマイナースケール | ⅰ | ⅱ | ⅲ (ⅲ♭) | ⅳ | ⅴ | ⅵ (ⅵ♭・ⅵ) | ⅶ (ⅶ♭・ⅶ) |
D メジャースケール | D | E | F# | G | A | B | G# |
D マイナースケール | D | E | F | G | A | B♭・B | C・C# |

主音と各構成音との音程は、上図の通りです。

次で最後だよ!頑張ろう!
G マイナースケール
Dの完全4度上、Gを主音とします。
音度 ( )はマイナースケール | ⅰ | ⅱ | ⅲ (ⅲ♭) | ⅳ | ⅴ | ⅵ (ⅵ♭・ⅵ) | ⅶ (ⅶ♭・ⅶ) |
G メジャースケール | G | A | B | C | D | E | F# |
G マイナースケール | G | A | B♭ | C | D | E♭・E | F・F# |

主音と各構成音との音程は、上図の通りです。

一回りしたよ!
まとめ
今回の講座では、12のマイナースケールのしくみを解説し、いっしょにスケールをつくってきました。
マイナースケールの音程配列は、3種類(ナチュラル・ハーモニック・メロディックマイナー)を合成すると全音・半音・全音・全音・残りは半音階となります。、
マイナースケールのしくみ:全・半・全・全 ➕ 半音階、
また、マイナースケールの主音と各構成音との音程は、
- ⅰとⅰの音程は完全1度
- ⅰとⅱの音程は長2度
- ⅰとⅲ♭の音程は短3度
- ⅰとⅳの音程は完全4度
- ⅰとⅴの音程は完全5度
- ⅰとⅵ♭の音程は短6度
- ⅰとⅵの音程は長6度
- ⅰとⅶ♭の音程は短7度
- ⅰとⅶの音程は長7度
- ⅰと1オクターブ上のⅰの音程は完全8度
これで、前記事で学んだ12のメジャースケールとあわせて24全調を網羅したことになります。
今までの内容をしっかり復習すれば、どの音からでもスケールがつくれ、音程をキーボード上でとることができるはずです。難しかったところは何度も復習してみてください!
また、スケールの指使いを知りたい方や、3種類のマイナースケールを個別に練習したい方は、こちらの記事でおすすめテキストを紹介しています。
ラジオ講座「楽譜不要!耳から始めるピアノコード入門」では、これまでに解説した音程・スケールを基礎として、コードの解説をしています。ぜひお聴きください!


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